財産分与
(1)財産分与とは
財産分与とは、夫婦が結婚生活において協力して作った財産を、離婚に際して分けることです(民法768条1項・777条1項)。
民法768条1項
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
内縁関係の夫婦の場合にも財産分与の規定の類推適用が認められています(広島高決昭38・6・19判時340・38他)。
ただし、内縁の夫婦と認められるには、それなりのハードルがあります。
(2)財産分与の権利の内容
財産分与は一般的には下記の3つの権利が合わさったものと考えられています。
1.夫婦が婚姻中に協力して作った財産の清算
2.離婚後の経済的弱者に対する扶養
3.相手方の有責な行為により離婚を余儀なくされた場合の慰謝料
民法768条3項
前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
上記の3(慰謝料)については、いわゆる不倫などで離婚に至った場合(婚姻破たんについて有責性が認められる場合)には、別個に不法行為に基づく損害賠償請求をすることが通常です。
むしろ、3.の慰謝料については、夫婦の共同財産に不動産しかない場合に、一方の配偶者の単独取得させることしかできないような場合に、慰謝料的要素を加味してこれを認めさせるなどの点にあると考えられています。
(3)財産分与の手続き
財産分与の手続きとしては、まずは当事者の協議をして決めます。しかし、協議が整わない場合には、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できます(民法768条2項)。
民法768条2項
前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
財産分与は、乙類審判事項として、当事者はまず、家庭裁判所に調停の申立をする必要があります(調停前置主義(家事審判18条))。調停が成立しない場合には、審判に移行します。
慰謝料請求と財産分与を一つの訴訟で併合して請求することもできますし、慰謝料請求を財産分与に含めて請求することもできます。
また、一度財産分与をしたとしても、慰謝料が含まれていない場合や、慰謝料額が十分でないと認められる時には、別個に慰謝料を請求することもできます。
財産分与の対象となる財産の範囲は、一般的には夫婦の協力関係が終了する別居時を基準として、評価は口頭弁論終結時を基準とします。
財産分与は離婚の要件でも離婚届の記載事項でもないので、必ず決めなければならないものではありませんが、後々トラブルになるので、離婚の際に決めておくことが望ましいと言えます。
なお、離婚してしまった後であっても、財産分与の請求は可能です。ただし離婚してから2年以内という期限がありますので注意してください。
法律相談のご予約・お問い合わせはこちらから TEL:098-988-0500
この記事を書いた弁護士 弁護士法人ニライ総合法律事務所 弁護士 古賀尚子 |
財産分与の計算
財産分与の計算(1)財産分与の計算の仕方財産分与の計算は、対象となる財産を確定させて、その後、その財産を寄与の割合に基づいて分けるという形で行われます。(2)財産分与の...
続きを読む財産分与を請求できる期間・財産分与の清算の基準
財産分与を請求できる期間離婚の際に財産分与の取決めをしなかった場合でも、財産分与の請求を後から行うことは可能です。ただし、請求できる期間は離婚のときから2年間とされてい...
続きを読む財産分与の合意書
財産分与の合意書財産分与の合意は,口頭ですることも可能です。しかし,実際に金銭を支払ってもらう,不動産の名義を移転するなどの場面になって,合意していなかったと争われると...
続きを読む財産分与の調停と裁判
財産分与の調停と裁判離婚の調停に付随して、あるいは、離婚が成立した後に単独で、財産分与の調停を起こすことができます。財産分与についての取決めが当事者間でできればよいので...
続きを読む自営業者・経営者の財産分与
自営業者・経営者の財産分与自営業者の財産分与や経営者の財産分与について、その会社や事業の資産は財産分与の対象になるのでしょうか。 1 自営業者の場合...
続きを読む財産分与の住宅ローンの扱い
Q 離婚に伴い夫名義の自宅の売却手配をしていますが買い手が付きません。現在、夫とは別居中で自宅には私と子供が住んでいます。夫から、自宅が売れるまで私がローンを全額支払うよう言われま...
続きを読むお気軽にお問い合わせください。098-988-0500受付時間 9:00-18:00 [ 土・日・祝日除く ]
ご予約・お問合せ